上野村

STORYNo.012

のんびりと木工を楽しむ生活を、体が動くかぎり続けたい

家族と共に上野村にIターンした辻さん。村の主力産業のひとつである木工を楽しく感じ、作家に転身した彼が作り出す木工芸品や、村での暮らしを教えてもらいました。

  • 辻 弘之さん
  • 福島県福島市 出身
  • 村民歴 28年 ※2021年2月時点

上野村に来たきっかけは?

 1993年、息子が生まれた翌年に上野村に来ました。私は福島市で生まれ、その後埼玉県で就職し、電気関係の仕事をしていました。仕事が忙しく疲れてしまって、田舎に移住したいなと考えていたところに、たまたま上野村の森林組合でコンピューター制御ができる人を募集していたので、転職をきっかけに移住しました。それまでは上野村に来たことはありませんでした。

 上野村に来て感じたのは、まわりが山ばかりだなぁ、と。妻は横浜出身なので、かなりカルチャーショックを受けていました(笑)。でも、4~5年住むと、田舎暮らしにもすっかり慣れます。都会よりも人間関係が密ですね。早朝の道路掃除やお祭りなど、いろんな行事がありますし、数年前まで村の消防団にも入っていました。もちろん正規の消防署もあるのですが、火事が起こった場合は消防団も駆け付けます。特に、山火事や山で遭難したなどの場合は、地元の人のほうが山道に詳しいので、頼りにされています。小さな村なので、みんなで助け合っているんです。

 

ひとつひとつ丁寧に作品を作る

休みの日は何をしていますか?

 富岡市まで車で買い物に行き、一週間分の食料品を買いだめます。食料は、週に1回生協の宅配も利用しています。あと、趣味といえば、たまに楽器演奏をします。中学生のときに、フルートを吹いていたんですよ。それで、電子笛という楽器を独学で練習して、クラシックやジャズなどを毎日吹いています。笛を吹くと正しい呼吸ができますし、指を動かすのでボケ防止になると思います。

 妻も3年前くらいにピアノ教室に通い始めました。去年の2月には発表会があり、妻がエレクトーン、私は電子笛で一緒に「星に願いを」を演奏しました。

お仕事について教えてください

 森林組合で3年くらい働いたときに、プログラミングの仕事をする傍らで、木工の仕事もしていました。子どもの頃からプラモデルや鉄道模型など、作るのが好きだったんですよ。覚えていくうちに木工が楽しくなって、木工作家として独立しました。

 当初は息子もまだ小さく、森林組合からの請け負いで椅子やテーブルなどの家具を作って生計を立てていました。ただ、大きな家具はひとりで作るのは大変なんですよ。それで、子どもが大きくなってからは、ペン立てやペントレイといったステーショナリーグッズ、ドールハウスや子どものおもちゃなどを作っています。木材はケヤキやヒノキ、ブナなど、上野村のいろいろな木を使います。木目が柔らかいブナの木が子どものおもちゃには人気ですね。

 好きで始めたことなので、木工は楽しいです。今は趣味のようなものでのんびりやっているので、全然苦になりません。自分で持ち運べる大きさの木工品ならずっと作り続けられると思うので、体が動く限りは上野村でこの仕事をやっていきたいと思っています。

 

辻さん作の木製の優しいドールハウス

棚は引き出しが開くなど、リアルな作りになっている