上野村

STORYNo.001

いのぶたのために試行錯誤。結果が出ると嬉しい!

上野村の特産品「いのぶた」を育てる上野村いのぶたセンターで働く唐沢さん。いのぶた生産に携わるために移住してきた若き彼女が、どのような気持ちで仕事に向き合っているのか、教えてもらいました。

  • 唐沢 百香さん
  • 東京都武蔵野市出身
  • 村民歴 1年3ヶ月 ※2020年7月時点

この仕事を選んだきっかけは何ですか?

 通っていた高校は、東京で畜産を学べる学校でした。その学校の活動のなかで、いのぶたの存在を知り興味を持って、見に行ってみたい!と思って、一度友達と上野村に来たんです。その後、いのぶたセンターで実習をして、その流れでここで就職したいと思うようになりました。

東京から移住してきて、上野村での暮らしはどうですか?

 移住当時、一人暮らしが初めてだったこともあり、村の方みんながとても優しくしてくれました。行事を教えてくれたり、相談に乗ってくれたり。面倒見がよくて、みんながお父さん、お母さんみたい。若い女性の移住は珍しいみたいで、「なんでここに来たんだろう?」と不思議がられました(笑)。理由を話すと「頑張ってね!」と言ってくれました。

 あとは、東京と違って、空気がきれいですね。星がすごくきれい。星空が綺麗に見えるというのは、空気が綺麗な証拠だと思います。

いのぶたセンターでの仕事内容を教えてください

 毎日の仕事は、いのぶたの給餌(エサやり)、掃除、出荷後の部屋の洗浄、健康観察です。その他、ワクチン接種、分娩対応、出荷、飼育に使う道具が壊れたときの修理など何でもやります。

 

雄のイノシシと雌のブタをかけ合わせて生まれる上野村の「いのぶた」。あまり馴染みがない動物ですが、どんな特徴がありますか?

 いのぶたは、見た目や動き、性格も、個体差はあるけれど、「ブタとは違うな」と初めて実習に来たときからずっと感じています。イノシシの 血が半分入っているだけでこんなに変わるんだ!と驚きました。
 特徴的なのは、怖がりなところ。ブタでも怖がりな子はいますが、いのぶたはどの子も全員怖がりで神経質です。でも、好奇心はすごく強い。気になるけどちょっと怖い、みたいな感じが見ているとよくわかります(笑)

 大きくなると力も強くなるけれど、生まれたときの可愛さは、ブタよりもいのぶた! ウリ模様がとっても可愛いんです!
 分娩は全部見たいので、遅い時間になっても残るようにしています。分娩を初め て見たのは高校生の時。感動というか、すごいなーと思いましたね。こんなに小さい子があんなに大きく育つんだなと……。
 ブタは平均6カ月で出荷と言われているんですが、いのぶたはもう少し時間がかかって、だいたい8ヶ月くらい。体重100㎏くらいが目安です。ブタは120㎏くらいで出荷なので、比べるとだいぶ小さいですね。

生まれる時から見守り、世話をしているいのぶたが出荷される時は、悲しさやさみしさはありませんか?

 高校生の時に初めてブタの出荷を見た時からずっと思っているのは、「おいしくなっていろんな人に食べてもらいたいな」ということです。これは、今も変わらず、 いつも出荷されるときにそう思いながら見送っています。食べてもらうために育てているので、おいしいお肉になってほしいなという気持ちの方が強いんです。

 

どんなところに仕事のやりがいを感じますか?

 自分でこうしたいなとか、やりたいなと思ったことを実行して、それがうまくいっ たときが嬉しいです。もっとこういうことをしたら、いのぶたにとっていいんじゃないかな、と試行錯誤しています。自分で考えて行動してそれがちゃんと実を結んで、 実感できたときは良かったなと思います。

 あとは、分娩関係。分娩の時に死産がなく、10頭生まれたら10頭全部健康だった とか、産子数が伸びているのを実感できた時も嬉しいです。
 お母さんブタが一人前のお母さんになるまで育てて、種をつける。この育成の段階がとても大切だけれど難しいんです。1年前、就職したときに、 お母さんになるブタの育成を任されて、今そのブタがすごくいいお母さんに育っています。子育ても上手だし、産子数も多いので、自分の行動がちゃんと形 になることが嬉しいですね。

これからの夢を教えてください

 こんなにおいしいいのぶたなのに、まだそんなに知名度が高くなくて出荷数も多くありません。上野村のなかだとみんな知っているけれど、村外に出ると知らない人も多いのが現状です。 だから、スーパーに行った時に、牛肉、豚肉と同じようにいのぶたが並ぶことが当たり前 になることが夢です。そうなってほしいなと思います。

 自分の仕事のできる量がこの1年であきらかに増えました。それが自分のなかで はすごく手ごたえがあって嬉しいんです。これからもいのぶたの生産を頑張りたい ですね。今はまだ表面的なことしか知らないけど、もっと内部のことやデータの管 理ができるようになれるといいなと思っています。村での暮らしは不便だなと思う ことはあるけど、この仕事が好きだから、ずっとここで働きたいですね。

※2020年7月執筆